(私はなんて事をしてしまったんだろう…)
目の前の布団で眠るあの子を見つめて自分を責める。
此処は春雁神社の本殿。
本来ならば、神以外入る事を禁止されている。
が、今は仕方がない。
それに、私が神に指名してしまった為、この神社の主人はあの子。
つまり、この神社の神はあの子なのだ。

遡る事昨日の夕方。
いじめに遭いあの子は瀕死状態に陥った。
あの子を生かすには、私が神に指名するしかない。
だが、人神様(ひとがみさま)は肉体を持っている。
死にはしないものの、乱暴すれば傷つく。
すぐには目覚めない。
人が神になるにはそれなりの代償が付く。
肉体に膨大な霊力や妖力を注ぎ込む。
それに耐えられなかった場合、醜い妖に成り下がる。
人に戻る事は出来ないだろう。
万が一、上手く行ったとしても何かしら失う事になる。
例えば、視覚を失う事や、人の姿を失う事もある。
あの子は比較的良い方だろう。
人の姿をしているし、うなされる事も無い。
あとは目を覚ますのを待つだけだ。