なぜか最近、学生位の女の子が毎日此処を訪れるようになった。
汚い潰れかけの神社だが、存在を知っていてくれる事が嬉しかった。
日課の掃除も楽しくなった。
何をするでも無く、ただ参道の石段に座っているだけ。
そんな事も嬉しくて、心が踊った。
(最後に見た人と服が違う?あれがヨウフクって物なのかな?)
今日も、あの子がやって来るのを待つ。
今日は勇気を出して隣に座って見よう。
もしかしたら、気付いてくれるかも知れない。
境内の鈴を磨き、賽銭箱も新しくした。
今は春。
人が好きな桜の木を増やして見た。
(…気付くかな、喜ぶかな?笑うかも知れない!)
鳥居の側で石段を覗き込む。
(頑張ったら、人を呼んでくれるかも…)
「あ、来た!」
あんなに楽しみにしていたのに、急に恥ずかしくなって思わず鳥居の陰に隠れる。
また、そっと覗き込むと、あの子は鳥居の下に座った。
忍び足で近づき、隣に腰を下ろす。
よく見ると、容姿は違えど、見た目の年齢は自分と近かった。
あまり楽しそうな雰囲気では無く、俯いたままだ。
(せっかく桜の木を増やしたのに…これじゃ見てくれない)
私は意を決して、声を掛ける事を試みる。
人は妖が見えない人が多いと聞くが、一か八か試して見ようと思った。
「ねえ、どうしたの?」