そう思ったのも束の間、聞き覚えのある声が耳に届いた。
「風花は頑張り過ぎだ。これだけ妖力を消費したらこうなる事くらい分かってただろう」
落下の痛みは無く、優しい温もりに包まれていた事に気が付いたのは、千里の顔を見てからだった。
「こんな奴、今の風花に倒せる筈が無いじゃないか。僕が倒して来てあげるよ」
そう言って私を拝殿の石畳に下ろすと落とした飾り紐を投げて寄越した。
そこからはあっという間で、千里が扇を取り出すとそのまま開く事もせずに横に一振り。
何が起こったのか考える間も無く、邪鬼は真っ二つになり、耳をつん裂く様な悲鳴をあげて消えて行った。
そして振り返った時の千里のしたり顔に若干の殺意を覚えたのを最後に意識は途切れた。