妖は大きく、日和を狙って来た者では無さそうだった。
ただの妖では無い、おそらく邪鬼だ。
神不在の間に溜まった邪気が形を成したのだろう。
妖では通れない結界も、鬼となる前の邪気なら通れてしまう。
納得だ。
先代の神が居なくなり、数百年。
邪気は祓えない私はせめて溜まりにくい様に努力したが、限界に達したのだろう。
弓を放ち邪鬼に攻撃する。
が、一向に弱る気配が無い。
力が弱まったのもあるが、大きな理由に心当たりがあった。
(このままでは、日和様が…!!)
救いを求めて神を探す邪鬼。
徐々に日和の居る本殿へ近づいて来ている。
着地に失敗して拝殿の屋根に転がる。
起き上がろうと手をついた時、自分の影を覆う程邪鬼が迫っていた。
思わず顔を上げる。
邪鬼と目が合い、目眩の様なものに襲われる。
基本的に人の負の感情から生まれる邪気は、少しずつ集まり、いつしか大きな邪鬼と化す。
邪鬼と目が合うと、その負の感情に呑まれ、最悪の場合は邪鬼の一部となる。
(しまった!こんな失敗をするなんて…戦わないと、日和様が…)
邪鬼を倒そうと一歩踏み出す。
刹那、私の体がぐらりと傾く。
真っ逆さまに落ちて行く時、走馬灯の様なものが見えた。
(私は、このまま彼の方達の元へ行けるのでしょうか…)