保健室の外、廊下。

『どう思う、龍一郎』

「……」

『スペシャルバカの貴様でも、覚えていよう』

「ああ」

身の内から話しかける禿鷲に、龍一郎は頷いた。

彼の記憶の中に、こんな出来事はなかった。

蛮は単純にヴァンパイアハンターとしてルナに勝負を挑み、幾度かの勝負を経て、ルナと心を通わせた。

その裏に魔道協会の暗躍はなかったし、バルトメロイも関与はしなかった。

龍一郎の記憶とは違う出来事が起きている。

歴史を変えようとすれば、世界の修正力が働く。

その修正が起きても尚、歴史を変えようとしている者がいる。