「あの…もしもし、なの」

すずが高級車に歩み寄り、運転席の窓を軽く叩く。

「天神学園に何か用なの…?ここは学園の敷地内だから、駐停車は遠慮してほしいの」

すずの言葉に、運転席に座る男…お抱えの運転手だろうか…は何も答えない。

代わりに。

「これは失礼した。美しいお嬢さん」

後部座席のスモークガラスが、パワーウィンドゥの音と共に静かに開いた。

中から顔を覗かせたのは、白髪に白い髭を蓄えた、彫りの深い顏の老紳士。

「ここが天神学園で間違いないのだね?よかった。日本は不慣れでね…運転手と一緒に、本当に合っているのかどうか、迷っていたのだよ」