この「空を翔べないカナリアは」には、実はモデルとなった子がいます。

著者が20代の頃知り合った子で、ヒロイン美優のように恋愛に臆病で、自分に自信がなくて、まるで鎧をまとうように、当時アムラーと呼ばれたギャルの服装をしていた子でした。

そのギャルの子と、実際にはちょっと違う部分もありますけど、実際にバイクの事故で他界した著者の幼なじみを貴慶のモデルとして、この話は書いて行きました。

一見、どこにでもあるような話でもあろうかと思われますが、著者としてはどうしてもこの話は整理したくて、だったら小説といった形にきちんと整頓して、気持ちをきれいに整えよう…といった感じで書いたものです。

どうしても書かなければ、美優や貴慶のモデルとなった彼女や彼と、向き合えないような気がしたのも事実です。

最初は100ページぐらいの短編にしようと書いていましたが、次から次へと思い出したり、あのエピソードをどうしようとか考えて行くうちに、270ページを超えた長編になってしまいました。

もし書かなければ、まだ気持ちはモヤモヤしていたかも知れません。

完結した今は、美優や貴慶のモデルとなった彼女と彼に、

「二人のこと、書いたからね」

と胸を張って、毅然と言える気がします。

これを読んだ読者のみなさんに、美優のような優しい彼女や、貴慶のように包容力のある彼氏があらわれますことを願って、あとがきに代えたいと思います。





2017年10月       英 蝶眠