しばらく美優は泣いていたが、少し落ち着いた頃、

「…美優」

「何?」

「うちは、うちがうちでいられる相手を見つけた。それが美優や」

貴慶の手が美優の頬を包んだ。

「美優のおかげで、自分が進みたい道がはっきりしたし、美優にどれだけ助けられてきたか」

「貴慶ぃ…」

「せやから、うちは美優を裏切るような真似はしたらあかんと思ってる」

貴慶は美優の濡れた目を反らさず見る。

「たとえそれが、生まれ育った場所を捨てることになっても、明らかに損であっても、美優と生きると決めた。せやから、もうバカなギャルとかそういうことは、言わんときやっしゃ」

少し強めな、それでいて底には温かい、確かな言葉のように美優には感じられた。