うちかぁ、と貴慶は思い出しながら、

「まぁあんまり手間のかからん子供やったらしいな」

記憶を手繰ると、どちらかといえば泣かない、騒がないといった気性で、

「しかし約束を破られたり、頭ごなしにやられると、かなり反抗したらしい」

「今と変わらないじゃん」

美優は吹き出した。

「それで、理詰めで諭すようにオカンが言ってくると、よう分からんはずやのに不思議なぐらい納得して大人しくなったり」

「ふぅん」

「まだ物心もつかんとき、髪を切るとかなった段階で椅子にちょこんと座らすと、爼の鯉でなすがまま切られてたらしい」

「…何かユニークな子供だったんだね」

美優の眼差しが柔らかくなった。