この出来事を境に。 美優には貴慶への疑問が生じた。 (どうして) 遠く離れた場所で一人で生きて行くことになったのかを、である。 目の前の貴慶は、苛烈な半生を送ってきたであろうに違いないはずなのに、 (どうしてだろう) と美優は思うのである。 グレてドロップアウトしてもおかしくないのに、なぜあんなに美優に優しく接することができるのか、と。