そのとき、である。 「…大丈夫ですか?」 声をかけてきたのは、オレンジのリュックを背負った、白デニムにカーキのブルゾンを着た、片手にヘルメットをぶら下げた男である。 男は手早く教科書やらノートやらを拾って揃えると、 「はい」 と美優に手渡した。