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ふと、僕はお花畑にいた。
色取り取りのきれいな花。かわいい花。
それらが、視界の隅まで広がっている。
風もなく、音もしない。
ただ、温かかった。
それにしても、僕はこんな美しい場所に、どうやって来たのだろう?
夢? これは夢なのか?
……向こうに人がいる。
誰だろう。
知っている人だろうか。
花を掻き分けて、その人の下へ近付いていく。
いつの間にか、その人は背中を向け、花畑の中でしゃがんでしまったようで、顔が見えない。
そして、僕は辿り着く。
「あら、カミイ君じゃない?」
聞き覚えのある、明るく、懐かしい声。
「あっ、早苗先生ですか?」
見下ろすと、見覚えのある小豆色のジャージ姿の女性がいる。一見すると、体育の授業を受けている女子高生と遜色がない程だった。
こちらを向いて、花畑から上半身を出す。
「結局、ここまでやって来たの?」
「どうやって来たかは、覚えてもいないし、分らないんです」
「ここはいいわよ。ホラ、お花がこんなにもいっぱいで」
この世界を見渡して、再び僕の顏に視線を向ける。
両手でしっかりと、大きな花束を掴む花束。先生がそれを差し出すので、僕は顏を近付けて、匂いをかいだ。
「そうですね。素敵な場所ですね」
「こうしていくら花を摘んでも、無くならないの。摘んだところだけ間ばらになるような、そんなことすらないのよ」
「そうなんですか……」



