オフセットスマイル


 ◆

 ふと、僕はお花畑にいた。

 色取り取りのきれいな花。かわいい花。

 それらが、視界の隅まで広がっている。

 風もなく、音もしない。
 ただ、温かかった。

 それにしても、僕はこんな美しい場所に、どうやって来たのだろう?


 夢? これは夢なのか?

 ……向こうに人がいる。

 誰だろう。
 知っている人だろうか。


 花を掻き分けて、その人の下へ近付いていく。

 いつの間にか、その人は背中を向け、花畑の中でしゃがんでしまったようで、顔が見えない。

 そして、僕は辿り着く。


「あら、カミイ君じゃない?」

 聞き覚えのある、明るく、懐かしい声。


「あっ、早苗先生ですか?」

 見下ろすと、見覚えのある小豆色のジャージ姿の女性がいる。一見すると、体育の授業を受けている女子高生と遜色がない程だった。

 こちらを向いて、花畑から上半身を出す。


「結局、ここまでやって来たの?」


「どうやって来たかは、覚えてもいないし、分らないんです」


「ここはいいわよ。ホラ、お花がこんなにもいっぱいで」

 この世界を見渡して、再び僕の顏に視線を向ける。

 両手でしっかりと、大きな花束を掴む花束。先生がそれを差し出すので、僕は顏を近付けて、匂いをかいだ。


「そうですね。素敵な場所ですね」


「こうしていくら花を摘んでも、無くならないの。摘んだところだけ間ばらになるような、そんなことすらないのよ」


「そうなんですか……」