彼女の笑顔が好きだ。

 ポスターの中で変わらぬ君が、とても好きだ。


 ずっとずっと、永遠でいる筈なのに、自分だけが一方的に崩れてゆく。僕だけが、誰も気付かぬうちに、暗闇の中で一人で壊れてゆく。

 時間は止まりはしない。永遠などではない。戻らない。

 何のための試練なのだろう?

 何を意味するだろうか?

 本当に一方的に過ぎる、儚い物語なのだ。だから尚更、納得する事に時間を費やすよりも、やらなければならない事に、神経を集中したくなった。誰かが答えを持ってくるのを、固く信じ、待っていることなど出来なかった。


 ──僕は小岩井早苗先生に会いに行った。

 そして、君に会いに行った。


 外の世界に身を晒すため、僕は実家を後にした。

 ようやくたどり着いた早苗先生は、僕と同じだった。

 先生は先生で、一足先に自分だけの世界に行ってしまわれた。

 もう二度と、帰って来てはくれないだろう。

 言いたいことは、沢山あった。聞きたいことは、それ以上だった。

 それでも、先生の姿を見て、突然、全ての諦めがついた。もう、逃げたりはしない。

 今後自発的に、僕が僕を見失うことはないだろう。それもこれも、先生のお陰かもしれない。


 僕はまだ、君に話さなければならないことがある。

 ちゃんと伝わるように、時間を掛けて話をしたい。

 僕がまだ、僕であるうちに。