繁華街に出て、僕はパチンコに勤しんだ。

 やり方が分らなかったが、そんな僕に、コンパニオンのような若い女性の店員が丁寧に教えてくれた。

 煙草の煙も、臭いはすれど、殆んど漂ってこない。僕の持っていた汚いイメージとは遥かに違う。若い女性客も多く、きれいなゲームセンターのような店だった。
 それでも騒々しさだけは、僕のイメージと変わらない。そんな空気自体に余り馴染みはなかったし、好きでもなかった。

 ただ、今日だけはいつもと違う雰囲気の中で、身を晒していたかった。



 持っていたお金の殆どを失って、店の外の自動販売機の前に立った。

 外のざわめきが、嘘のような静けさに思える。


 コインをねじ込んで、缶コーヒーを買う。

 選んだのは、真夜中のような黒いもの、砂糖が一切入ってない、熱(ほて)ったブラックコーヒーだった。

 プルタブを上げて、小さな穴から黒い液体をすする。

 自動販売機のポスターに目を落とすと、缶珈琲を宣伝するモデルの若い女が、そんな僕を目を細めて眺めている。


「何だよ。君も僕に、何か言いたいのか?」


 缶の印刷を見せながら、絡むように言った。


「僕はね、今、とっても辛いんだよ」


 僕はコーヒーの残りを、一気に飲み干した。