私はそんなに可哀想ですか?

「・・・そうだね」

俺は40年一体何をして来たのだろう。明子ちゃんを慰める言葉一つ浮かんで来ない。俺が何を言ったとしても気休めにもならないのはわかっているが、それでも何か声をかけるべきなのに。

「御手洗さん、私が今1番欲しいものって何だと思います?」

唐突に明子ちゃんは質問を投げかけて来た。

「何かな、健康な体とか・・・」

「ハズレです。それも欲しいですけど、諦めちゃいましたから。正解は日常です」

「日常?」

彼女の言葉の意味がわからず、間抜けな声で聞き返した。

「はい。正直、病気の事を受けとめられた訳じゃないですし、先の事を考えると怖いです。でも、いずれ失うならせめて今は日常の中にいたいんです」