何年もかかったが、人外が人と暮らすのを邪魔する組織の撲滅まで完遂することができた。

 人外と人とのハーフもいるし、図らずも人外になってしまった奴もいる。
 そいつらを導いていくために副社長も悪くないかと前よりも仕事に前向きだ。

 ウェディングドレスもゆっくりだが、着々と顧客を増やしていた。

 何ヶ月も前から発注を受けて式に間に合わせる。
 その何ヶ月、いや、何年も一緒に過ごしたい気持ちが変わらないことに前よりも感動した。

 ハリネズミは相変わらずな感じだった。
 番いの記憶を消すと番いではなくなると聞いて朱莉の記憶を消す決意をした。

 朱莉と離れるなら獣になってもいいとも思っていたが、どうやら人としてまだまだやりたいことがあるみたいで、まだ人でいられることに感謝していた。

 ただ朱莉と離れてからは眠ると人に戻るようになった。

 そして、時間はかかったが、仕事と顧客の注文したドレスの合間を縫って1着のドレスを作っていた。
 トルソーに着せられたドレスはレースとビーズやスワロスキーをあしらった可憐なドレス。

 もしかしたら間に合わないのかもしれない。
 それでも、無駄だとしても作りたかった。
 着るのが憧れだと言っていた朱莉に。

 まだ狙われる恐れのある朱莉は爺達が護衛していた。
 もちろん本人には気づかれないように。

 だから爺に渡してもらおうと思っていた。
 何かいい理由をつけてプレゼントしたらいい。

「坊っちゃん。出来上がったのですね?」

「あぁ。時間がかかっちまったな。
 間に合った……かな。」

「それはもちろん。」

 護衛をしている爺が言うなら間違いないな。

「では、お預かりして必ずご本人にお渡ししますので、坊っちゃんも仕事に行ってください。」

「あぁ。そうだな。」

 爺の後ろ姿を見送って、仕事に向かおうとしたところで何かに引っ張られて気を失った。