アパートに戻ると未だにへたり込んでいた朱莉を見つけた。
 やはり触れたくなって覆い被さるように抱きしめた。

「ダメだな。俺。
 話しようと思ってここに来たのに我慢できねーわ。」

 好みのタイプというわけじゃない。
 どちらかと言えば普段なら見向きもしない部類だ。

 それなのに今まで関係を持ったどの女よりも愛おしく感じる。

「やっぱりあの…食べられちゃうんですか?
 ……副社長は変態さんだから。」

 変わらない朱莉の『副社長』に『変態さん』
 そこまで緊張してるのかと笑えてしまう。

 笑われて不満なのか朱莉は黙っている。

「だから、俺は誰彼構わずじゃない。
 女に困ってるとでも言いたいのかよ。」

 前は自分の気持ちがハッキリしていなかった。
 獣側に引っ張られて衝動が抑えられないだけだと思っていた。

 たぶん今も獣側に引っ張られているんだけど、それだけじゃない理由が分かった。

「飯にするぞ」

 頭をぐりぐりして体を離した。