会議は昨日の狐について。

 人や我が社をよく思っていない奴。
 狐みたいな奴らが集まって大きな組織になりそうな怪しい雲行きがあるらしかった。

 人外全体を邪魔するために、どうやら結婚詐欺を働いて番いになりそうな奴を減らそうとしているらしかった。

 もっと踏み込んだ話をしたいのに、オヤジは朱莉を会議に参加させていた。
 どこまで理解しているのか分からない朱莉に余計な情報は与えたくなかった。

 オヤジが朱莉をここに呼んだ理由は暫くしてから判明した。

「朱莉ちゃんのお友達も狐に騙されそうになったんだって?」

 オヤジの言葉に愕然とする。

 何故、オヤジが知っていて、狐と会った時に一緒にいた俺が知らないんだ……。

「はい。結婚が決まったからと報告を受けて、私もその……好きな人を見せるってこの会社に連れて来たんです。」

 好きな人。もうどうでも良かった。
 どうせ俺とか言うのかもしれない。
 だからなんだと言うんだ。

 俺がというより、オヤジが好きなんじゃないのか。

「健吾。聞いているのか。
 ひどい顔をしているぞ。
 またドレスなんかを作ってるのか?
 次期社長としての自覚が足りないぞ。」

 次期社長なんてどうでもいい。
 俺は……俺は………俺だ。

 帰っていいと言われ、会議室を飛び出した。