「どうして謝るんですか?」

「どうしてって………。」

 衝動に駆られただけだからとは言えずに黙っていると朱莉が驚くことを口にした。

「その、驚きましたけど嫌だったわけじゃ……。
 私は、その、好きですから。」

 好きだから。
 嘘ばっかりだと思うのに聞かずにいられなかった。

「もしかして…ハリーにキスした……とか。」

 ビクリと体を揺らした朱莉に答えをもらったようなものだった。
 変な奴だとは思っていたが……。

「どうしてそれを知って……。」

 どうしてと言われて説明していいのかと考えていると、朱莉が核心をつく質問をした。

「あの……間違っていたらすみません。
 健吾さんは……ハリーくんですか?」

 そうだよな。さすがに気づくよな。
 俺が居なくなればハリネズミがいて、ハリネズミが居なくなれば俺が居るんだから。

 覚悟を決めると健吾は口を開いた。

「あぁ。そうなるな。」

 朱莉が息を飲んだのが分かった。

 記憶を消さなくちゃいけないな……。
 覚悟を決める健吾に朱莉は質問を重ねた。

「じゃ前に寝ていた時は、ハリーくんから健吾さんに戻ったわけですね?
 どうして言ってくれなかったんですか?」

 どうして、どうして。
 聞きたいことは山ほどあるのは当たり前だろう。
 自分だって、どうしてと聞きたいことがある。

 それでも……。
 自分から話さなきゃいけないだろう。
 どうせ消す記憶だとしても。