ひとりで走っているなんて、そんなこと感じなかった。
駅伝って孤独だ。
しかもアンカーとなれば、前後の差はさらに広がり独走状態でゴールするチームだって少なくはない。
山仲高校のアンカー、あたしもそれに変わりはなかった。
襷をもらった地点では、後続との差は大体六秒から八秒あたりだった。
アンカーは五キロしか走らない。
飛ばそうが飛ばすまいが、スピード次第で、気持ち次第で六秒なんて逆転されてしまう。
あたしはもちろん、泰知の言葉を思い出して最初にスピードに乗るために飛ばした。
1000mの通過は自分のしていた腕時計でだいたい三分と少しというところだった。
速すぎたかもしれないけれど、あたしの足にも腕にも体の調子にも呼吸にもなんの異常はない。
今日も、体はいつもより軽く感じている。
大丈夫。
振り返らずに、前だけ向いてゆく。
自分の呼吸音と足音だけを耳に入れる。
ここは応援が少ない地帯だ。
無理にスピードは上げずに、自分のペースを刻もうと心に決める。