が、当然ながら、淡い期待は、淡いだけに当日の放課後には、儚くも消えた。

そこまで学校は単純でも、愚かでも、浅はかでもなかった。
それに担任には15歳のプライバシーを保護する義務はなかったし、それを察するだけのデリカシーを持ち合わせているタイプの男ではなかった。その証拠に、私の退学希望理由にはまるで興味がないようだった。
まあそれほど切実に、親にバレることを恐れていた訳でもなかったのだけれど。
現に、我が愛すべきママ様の反応は、あんた何考えてるの?なんで一言位相談がない訳?、だった。
それも、マックのポテトにチキナゲのバーベキューソースをべっとり付けながら、まるっきり興味なさそうに、コンポから流れるオレンジレンジのリズムを縦ノリで刻んでいた。
「…キラリ瞳に映る誰かの叫び…」


さすがにパパはママほど甘くなく、薄く手形が残る程度のビンタをちょうだいした。
ちょっとホッとした。パパは世間並の親だ、と思ったのだが、それは次の一言で打ち砕かれた。
「入学金は仕方無いから諦めるとして、月謝を年間で払い込んだのは痛いなぁ」
娘が高校を退学した理由よりも、無駄にした月謝の計算か…。
まあ変に泣き喚かれたり、思いとどまるように説得されたりするよりはましだけど。