私が小林くんと知り合ったのは、ほんの数ヶ月前。
くじ引きで負けて引き受けた球技祭の実行委員会で、隣に座った男の子がちょっとイケメンだな、くらいに思っていたところ。
その小林くんがふいに話しかけてきたのがきっかけだった。


「なー。
その髪って地毛?」


私の髪は誰に似たのか栗色の巻き毛で、小さい頃は男の子からいじめられる対象にもなったから、コンプレックスの塊だった。


そっと手を伸ばしてきた小林くんに、昔みたいに引っ張ってからかわれる、と身構えたとき、


「ふわふわして気持ちいー」


優しく髪を掴む小林くんの笑顔に、私は一瞬で心を奪われた。


後から聞いた話によると。
それは彼の家で昔飼ってた大型犬の毛並みと似てて、懐かしかったとかなんとか。


だけどそんなこと知るよしもない私には、それは恋に落ちるのに十分すぎるくらいの威力があって。


あの日以来、コンプレックスだった天然パーマは私のお気に入りになり、小林くんは一番気になる男の子になった。