瞬間、しまったと思った。
この顔をした愛麗が考えることはろくでもない。


「いや、やっぱ、「ちょっとお願いがあるんだけど」


語尾にハートが付きそうな位に可愛らしく言う愛麗。実際可愛いんだけれど、長年一緒にいるからか若干鳥肌がたった。


「何を」

「実は、あたし彼氏出来たんだー」

「そ」


キャピキャピする愛麗に素っ気なく返す。
彼氏か、だからいつもより化粧濃いなって思ったんだよね。


(でも、何の関係が?)


「それでね、今日デートなの」


なんだ、ノロケか、ノロケなのか。
彼氏のいない私への当て付けか何か?
彼氏いない歴もうすぐ20年を更新しようとしている私。だからといって彼氏が欲しいのか、と言われたら悩む所だ。


「だから?」

「ほら、あたし恥ずかしがりじゃん?」

「…………………………は?」


今、幻聴が聞こえた?
耳を疑ってしまった。
この子は、今なんて言った?
もう一度言ってくれないだろうか?


「なんて?」

「恥ずかしがり」

「誰が?」

「あたしが」

「ハッ」


笑える。愛麗が恥ずかしがりなら世の中の皆が恥ずかしがりだわ。
鼻で笑うと、ギロリと睨まれた。