すると、疾風さんは私の携帯と自分の携帯を向かい合わせにした。


(あ、)


「連絡する」


そういって携帯を返してくれた疾風さんは、来た道を帰っていった。


ポツンとその場に残された私は、携帯を見つめ、アドレス帳を開く。


「井上 疾風……」


五十音に並べてあるから、愛麗の次に表示されたその名前。


(もう二度と会わないのに、)


「変なの」


こんな私を気にかけるなんて、変なの。


私は、携帯を閉じると、今度こそマンションに入った。