「紅蓮。この子に、そんな顔を向けないでください」
女性が困ったように笑う。
男は少しだけバツの悪そうな顔を見せた。
「私は、東里 楓といいます。そして、彼は東雲 紅蓮。境内で倒れていたあなたを、彼がここまで運んでくれたんですよ」
「え、この人が……」
あぁ、だから──
意識を手放す寸前、最後に見た燃えるように赤い瞳は、この人だったんだ。
「もし紅蓮が助けていなければ、そのまま雪に埋もれていたかもね」と続けた楓さんに、私は一瞬でゾッとする。
「あ、あの……助けてくれてありがとうございました」
「お前、名前は?」
「あ……私は、涼風 蘭です」
「涼風……やっぱり、この辺りでは聞き馴染みのない氏ですね」
楓さんはそう言って首を傾げる。
同時に、紅蓮が目を細めた。
まるで何かを確かめるように、私の顔を見つめたまま。
「……お前、何者だ」
「え?」
「なぜ境内にいた?」
「……それは、」
……私が聞きたい。
私はただ、神社にお参りに行っただけなのに、気づいたらこんな場所にいて。
自分でも何が起きているのかさっぱり……。
「私にも、よく分からなくて」
「蘭さんは、"にほん"という場所から来たと」
私の言葉に補足して、楓さんは紅蓮を見上げた。



