なんで私、妃の座を賭けて競うこと、承諾しちゃったんだろう。


生半可な気持ちでしていい事じゃないのに。


「さて、そうと決まれば部屋を決めます。

睡蓮の隣の部屋と、姫蓮の隣の部屋がそれぞれ空いているけれど、広さも綺麗さも変わらないわ。

どちらでもいい?」



……色々と思うところはあるけれど、元の世界に帰る手がかりが一切ない今、私はどうしたってこの人たちにお世話に以外に生きる術がない。


今出来ることを全力でやっていれば、自ずと元の世界に帰る手がかりだって見えてくるはず

……そう信じて、希望を捨てずにいよう。


「双葉様、涼音は姫蓮殿の隣の部屋が良いです」

「……そう、なぜ?」

「やはり、いくら紅蓮様の兄上とは言えど、嫁入り前の女子が殿方と隣のお部屋というのはいかがかと」

「それを言うなら蘭だって同じでしょう」


涼音さんの言い分に、少しだけ顔を曇らせた双葉さんは、チラシと私へと視線を向けた。


「わ、私はどこでも……!お部屋は涼音さんの好きに決めてもらって構いませんよ」

「……では遠慮なく。いいですよね、双葉様?」


そう問いかける涼音さんに「蘭がいいのであれば」と双葉さんは静かに頷いた。


私を蔑む涼音さんの勝ち誇ったような眼差しに、ドクンと心臓が震える。


"では遠慮なく"が"当たり前だろ"に聞こえたのは、きっと私の考えすぎ……なんかじゃない。***