愛し紅蓮の瞳

「はい、もちろんです!」


にやこやかに微笑む涼音さんを見ながら、さっき広間で聞いた姫蓮ちゃんの言葉を思い出す。


『私は小さい頃から、"紅蓮お兄ちゃんの妹"って言うだけで、涼音さんに敵視され続けています』



姫蓮ちゃんの言葉が本当なら、涼音さんのこの笑顔は嘘ってことになる……。

そう思うと、つくづく底知れない子だなぁ。


「蘭も、よろしくね」

「あ……はい。私も姫蓮ちゃんに色々と教えてもらいたいこともあるので、ぜひ」

「そう、昔から姉を欲しがっていたから姫蓮も喜ぶと思うわ」


双葉さんってずっと怖い人だと思っていたけれど、こうして笑った顔を見ると、そんなこともないのかもしれないと思えてくる。


……普段はピリッとした空気でそりゃもうとてつもない威厳を感じるけれど、

根はきっと優しくて子ども想いのいい母親だ。


東雲家二代目当主の妻には、それだけ背負うものがあるってことなのかな。


……紅蓮は東雲家の三代目。


その妃になると言うことは、必然的に双葉さんの跡を継ぐという事でもある。

いや待て、私に務まるわけがない。


それに、私はずっとこっちの世界にいる訳にはいかない。

お父さんもお母さんも心配してるに違いないし、千紘の受験だって迫ってる。


早く帰る方法を見つけなくちゃ……。