愛し紅蓮の瞳

「そこで、しばらくの間は東雲家の屋敷にそれぞれに部屋を与え、一緒に生活することにします」

「え……!?」


今、双葉さんなんて言った!?



東雲家の屋敷に部屋を与えて一緒に生活する?それって、しばらく東里には帰れないってこと?

嘘……。


ついさっき、当分は東雲家に来ないことにしようと決めたばかりだったのに、まさか明日からも毎日、東雲家でご飯!?

いや、ご飯だけじゃ済まないよね。

生活する上で必要なこと全部を、東雲家で……!?


「紅蓮様はもちろん、敬愛する双葉様のお近くに居られること、涼音はとても光栄に思います」


すました顔で双葉さんに笑いかける涼音さんは、これからの生活に胸を踊らせているらしい。

紅蓮が好きなだけならず、双葉さんへの媚び売りまでもが凄まじい。


……この女、出来る。


「……蘭も、意義はないな?」


そんな涼音さんの言葉に、これと言って返事をしなかった双葉さんは、少しの間のあとで私へと視線を向けた。


意義も何も……あったところで聞いてくれないくせに。

「……はい。しばらくの間、お世話になります」


「何も気負わず、いつも通り生活すればいい。分からないことは気兼ねせず聞きに来なさい。

それから、うちには女の子が一人だから、姫蓮とも仲良くしてやってね」


姫蓮ちゃんのことを話すとき、双葉さんいつもより、少しだけ優しい顔をした。


母親の顔ってやつだろうか。