愛し紅蓮の瞳

「朝食が済み次第、涼音殿が待つ部屋に案内します。そこで二人一緒に話を聞いてもらうので、そのつもりで」

「わ、分かりました!」


あぁ、どうしよう……。

どうやら、いよいよ本格的に妃の座を賭けた戦いが幕を開けようとしているらしい。



チラリと紅蓮に視線を向けてみたところで、相変わらず助けてくれる気は更々なさそうだし。

元はと言えば紅蓮のせいでこんなことになってるって言うのに……。

あぁ、本当にどうしよう。
こうなったら、ご飯なんて喉を通るわけがない。





***

静まり返る部屋の中。


私の隣には、それはそれは可愛らしい品の塊とでも言うべき女の子が一人、姿勢良く正座したまま真っ直ぐ前を見据えている。



「二人にはただ普通に日常生活を送ってもらい、その中で、紅蓮に相応しいのはどちらかなのか私に見極めさせてもらいます」


双葉さんのブレない声が鼓膜を震わせて、背筋がゾクゾクと栗立つ。


何とも言えない感情に包まれるけれど、なせが不思議と緊張していない自分に驚く。


もっとドキドキするかと思っていたのに。


……きっと、まだどこか他人事なのかもしれない。