愛し紅蓮の瞳

その足音は、ゆっくりと、一定の間隔で近づいてくる。

女性も気付いて、足音のする方に視線を向けた。
そして──静かに襖が開く。


「紅蓮、ちょうどいいところに。目が覚めましたよ」


名前を聞いた瞬間、なぜか胸の奥がざわついた。

そして、そこに立っている人を見た瞬間、
思わず息を呑む。


「……っ」


黒に近い髪。

高い背。

細身なのに、決して華奢じゃないのが着物越しでも分かる。

そして。

紅蓮色の瞳。

吸い込まれるような鮮やかな赤。
まるで炎を閉じ込めたみたいな……。


そうだ──。
夢か、現実か……意識を手放す直前、私が最後に見たのは、この紅蓮色の瞳だった。


「……紅蓮」

思わず、その名を繰り返す。

「…………」

紅蓮と呼ばれた男はただ、私を見ている。
その視線があまりにも真っ直ぐで、思わず生唾を飲む。

そんな私を見て、男の眉がほんの少し動いた。

「……俺が怖いか?」


冷たく、低い声。

けれど。

なぜだろう。

少しだけ――寂しそうに聞こえた。