それに、もし。

万が一私が妃になったとして、紅蓮のことを好きになってしまったら?


紅蓮からの愛を求めてしまったら?

もちろん、あんな横暴野郎を好きになるなんて、有り得ないって思ってるけど。

人の気持ちなんて分からないし、絶対なんてないと思うから。


つまり、そんな"もしも"が起こってしまったとき、私だってただの"紅蓮に気がある女"になってしまう。


そのことをきっと、紅蓮は考えてないんだろうけど。


───バチッ


そんなことを考えながら紅蓮へと視線をやれば、タイミングよく顔を上げた紅蓮と思い切り目が合い、心臓が波打つ。

私と目が合ったことに驚いたらしい紅蓮もまた、一瞬目を見開いた。

かと思えば、まるで「見るな」とでも言いたげに、私にだけ分かるくらい小さくベッと舌を出した。


……ほんと、ムカつくやつ!


「……ふふ、蘭さんと紅蓮お兄ちゃん、本当にお似合いですよね」

「ど、どこが!?」

見られていないと思っていたのに、隣から姫蓮ちゃんに声を掛けられ、思わず大きな声が出てしまった。

慌てて口を抑えてみても後の祭りで、双葉さんからの視線が痛い。


あぁ、食事中に大きな声を出すなんて、品の欠片もないって思われたに違いない。