「やっぱり、勝てるわけないよね。才色兼備のお嬢様なんでしょ?涼音さんって」

大きなテーブルのため、コソコソ話す分には双葉さんたちに聞かれる心配はないと分かりつつも、ついつい、挙動不審になってしまう。

……これじゃ逆に怪しいやつだよ。


「……こう言うのもなんですが、涼音さんは少しクセの強い方で。確かに才色兼備でこの辺りでは右に出る者はいないと聞きますが、私は昔から苦手なんです」

「ク、クセが強いって言うのは、例えば……?」

「とにかく紅蓮お兄ちゃんのことが大好きで。私は小さい頃から、"紅蓮お兄ちゃんの妹"って言うだけで、涼音さんに敵視され続けています」

「え……?妹でもダメなの?そ、そんなに?」

「はい。だから……恐らく蘭さんへの当たりはもっと強いのではないかと心配で」

「うわ、それはまた面倒くさそうだなぁ」


……涼音さんは、本当に紅蓮のことが好きなんだ。


紅蓮は、自分にこれっぽっちも気のない私を妃としてそばに置きたいって言うけど、やっぱり私が妃の座に就くよりずっと、


涼音さんが紅蓮のそばにいるのがいいんじゃない?



紅蓮を想っているなら尚更、涼音さんならきっと紅蓮を支えてあげられる。