「あの紅蓮お兄ちゃんが、会ってすぐに妃にしたいって申し出るくらい心を許した女の子が現れた!って、屋敷内では蘭さん有名人なんですよ」

「いや、そ……それは誤解で!心なんて1mmも開いてもらえてないし、それに」

「そんなことないですよ。あんなに頑なに嫌がっていた紅蓮お兄ちゃんが、自分から妃にしたいって言うくらいですから。本当に凄いことです」

「あの、さっきから"紅蓮お兄ちゃん"って言ってるけど、もしかして紅蓮の妹さん、なのかな?」

「あ、……ごめんなさい!申し遅れました。私、東雲家長女の姫蓮と申します。好きに呼んで下さって構いませんよ」


どうしよう。

妹だろうとは思っていたけれど、紅蓮にこんっな可愛い妹がいるなんて、全然信じられない。


……でも確かに、紅蓮も顔だけはずば抜けて整ってるんだった。

性格が災いして全然かっこよく感じないけど。


「……じゃあ、姫蓮ちゃん。変な話かもしれないけど、私、この世界には不慣れで」

「蘭さんの事情は父様から聞きました。

おまけに母様のせいで紅蓮お兄ちゃんの妃の座を巡って涼音さんと競うことにまでなって、心配していたんです」


眉を下げてまるで子犬のような目で見つめる姫蓮ちゃんにつられて、自嘲気味に小さく笑う。