しかし、南梨だけは東雲の配下に入ることを、そして平和で刺激のない暮らしを嫌った。


南梨は元々、白狐(びゃっこ)と呼ばれる物の怪の血族で、東雲の次に統制力も武力も兼ね備えていた。


東雲が東西南北を統制してしばらく経った頃、ついに南梨は、東雲に統制されることに納得がいかず、



反乱を起こした。



武力では負けを知らない東雲だったが、武力では勝てないと考えた南梨は白狐の力を解放し、妖の力で東雲を攻めた。


不意をつかれた東雲は、妖の力に対抗する術もなく。その反乱によって、深森では多くの人が亡くなったと光蓮様は唇を噛み締めた。


しかし、東雲はいくら南梨が白狐の血族だからと行って、戦うことを諦めるわけにはいかなかった。


東雲が諦めたら、東、西、北の民が苦しむことになるから。


そこで光蓮様のお父さんである、初代東雲家当主の誠蓮(せいれん)様は



「民を守るため」に、東州の外れにある岩山に何百年も前に紫黒の巫女によって封印されていた、亜魔羅(あまら)と呼ばれる鬼と契約を結び、



自分の実の孫の心の中に鬼を封じると言う、とても、とても辛いご決断をされた。