愛し紅蓮の瞳

「ねぇ、楓さん」

「はい」

「紅蓮って……何者なんですか?」

ほんの一瞬。
楓さんの目が揺れた。

「何者、ですか」

「だって……あの人、普通じゃないですよね?」

あんな瞳をした人なんて、私は他に知らない。

炎みたいに燃えるような、赤。

胸を押さえて苦しそうにする姿を思い出すと、なんだか私まで苦しくなる。

──あれ?

ふと思い出したのは、
昨日、手水舎で水面に映った琥珀色の瞳。

あれは誰?……紅蓮じゃない。

あの人が私をこの世界に落とした?
……だとしたら、一体、何のために?


「紅蓮は──」

楓さんが何か言いかけたとき、

「楓さん」

低く、静かな声がした。
振り返れば、いつの間にか、襖の向こうに紅蓮が立っている。

「紅蓮……」

「虎太(こた)が探している」

「あら、何かしら。
蘭さん、支度が済んだら、廊下の先にある居間に来てください。朝ごはんの用意をしておきますから」

「あ、分かりました。ありがとうございます」

虎太って、誰だろう?
そんな疑問を抱きながら、襖から消えていく楓さんの後ろ姿を見送った。