「おはようございます」
「おはようございます……」
楓さんは、昨日と変わらない穏やかな笑顔を浮かべていた。
その姿を見た瞬間、少しだけ肩の力が抜ける。
知らない世界。
知らない場所。
そんな中、唯一楓さんだけは私に安心を与えてくれる。
「よく眠れましたか?」
「えっと、」
「なんて……眠れるわけないですよね」
楓さんは私の顔を覗き込む。
「まだ顔色がよくありませんね」
「……昨日のことが、夢だったらいいのにって」
思わず苦笑すると、楓さんも困ったように笑った。
「そうでしょうね」
「楓さんは……信じてくれるんですか?」
「何をです?」
「私がこことは違う世界から来たってこと」
この世界は、楓さんにとっての普通。
私が言うことを、信じられなくても無理はない。
だけど、楓さんは少しだけ考えてから、静かに頷いた。
「信じます。紅蓮が、あなたを連れてきましたから」
「……え?」
「紅蓮がここに蘭さんを連れてきたことは、偶然じゃない気がしています」
「でも、紅蓮は私がどうしてここにいるのか分からないって……」
「そうですね」
楓さんは微笑むだけで、それ以上、何も言わなかった。



