愛し紅蓮の瞳


でも、裏腹に、紅蓮がくれた言葉たちは、

──少し休め。

── 明日、倒れていた境内まで連れて行ってやる。

言葉足らずだけど、彼なりに私を気遣ってくれているのが分かるものだった。


「紅蓮」

遠い背中を呼び止める。

無視されるかな、なんて思ったけれど、紅蓮は静かに振り返った。

「……ありがとう」

「…………」


一瞬。
本当に一瞬だけ。

その紅蓮色の瞳が揺れた。

そして、

「……別に」

それだけ残して、今度こそ襖の向こうへと消えていった。
私はその背中を見つめながら、胸の奥に小さな違和感を抱えている。

怖い人。

そう思った。

けれど。

なぜか、それだけではない気がした。

あの赤い瞳の奥に、
誰にも見せたくない何かを抱えている。

そんな気がした。


このときの私は、まだ知らない。
あの炎のような紅蓮色の瞳が、

いつか私にとって――

切ないほど、愛おしいものになることを。