「ぐ、紅蓮?」
咄嗟のことに驚いて、気づけば、名前を呼びながら一歩近づいていた。
「大丈夫?心臓、痛いの?」
「来るな」
鋭い声。
思わず、次を踏み出そうとした足が止まる。
紅蓮は目を伏せて、
しばらくすると、ゆっくりその手を胸から離した。
「……何でもない」
「でも、何でもないって顔には」
「お前には関係ない」
「っ、」
確かにそうだ。
ついさっき、初めて会ったばかり。
もし、紅蓮が何か苦しんでいるとしても、それは私には関係のないことなのかもしれない。
だけど──
「し、心配くらい……」
「……?」
紅蓮は静かに顔を上げた。
「関係のない私を、貴方は助けてくれたんでしょう?」
「…………」
「私にも、心配くらいさせて欲しい」
「……勝手にしろ」
それだけ言って、紅蓮は再び背を向けた。
その背中は、妙に遠く感じた。
まるで、
誰かに近づかれることを、怖がっているみたい。



