「"にほん"?」
訝しげな表情で私を見下ろす紅蓮。
怖い。
紅蓮色した瞳が、まるで炎のようだと思った。
「私、元の場所に家に帰らないと。きっと、家族が心配してる」
「……蘭さん」
私の肩にそっと手を当てて、優しく撫でる楓さんの手。
その手は気が動転していた私を、少し冷静にさせる。
「"東州"なんて聞いたこともないし、"日本"を知らないなんて有り得ない……だけど、もし本当にそんな事が有り得るなら──」
きっと、ここは私の知ってる世界じゃない。
「…………」
紅蓮はさっきからずっと黙ったまま。
その沈黙が、怖かった。
そして、少しの沈黙の後──。
「少し休め」
「……え?」
「明日、倒れていた境内まで連れて行ってやる。
だから今日は、」
そこまで言いかけて、
紅蓮の手が、自らの胸元をギュッと掴んだ。
「……っ」
一瞬、その顔が歪む。



