「...ありがとう...。」
下を向き、少年に目を合わせずに私は彼にお礼の言葉を述べた。

「おう。」
「それと、ごめんなさい...。」
「...?」

少年は私から告げられた言葉が予想外だったのか、どういうことだ、と言わんばかりに黙ると同時に、私の頬に涙が伝い、止まらない。

「君に、殺させてしまって、ごめん、なさい...。」
肩が震え、うまく言葉を紡げない。だけれど、彼にも私がなんと言ったのかは伝わったようで。

彼はなぜ私が謝っているのかをようやく理解したようだった。

「あぁ、気にすんなよ。あいつはどっちみち殺さなきゃいけないやつだったし。」

本当なのか、私をかばうための言葉なのかはわからない__が、少年が告げたその言葉に少しだけ救われる私がいた。


「だからさ...泣かないでよ。」
__彼が、ドラゴンを殺したのは私のせいではない。
その自分勝手な事実と少年の告げたその言葉が、私の流れる涙を止めた。

「あり、がとう。」
そしてもう一度、今度はしっかりと彼の顔を見て私はそう言った。
「ん。」


まだ少し肌寒い風が吹く、出会いと別れの4月。

___これが私、街の花屋で働く【アリア=カトリック】と、後々知ることになるギルドで天才剣士と呼ばれている【アベル=イザナード】の出会いだった。