「……じゃあ俺も混ぜろ」
「へ?」
まさか、そんなことを言われると思ってなかったので水無瀬くんとふたりで顔を見合わせた。
普段他人と馴れ合うことは極力避けているように見えていたから、予想外もいいところだ。
あとからやってきた清水さんも何事とでも言うかのように目を見開かせていた。
私たちはそのままの空気感のままで場所を中庭に移動した。
ベンチに座って、並んでそれぞれのお弁当を広げる私たち。
桐生くんは堂々と私の隣を陣取った。となりに座る清水さんから「気に入られてるね」なんて小声で言われて苦い顔を返した。
「あれ、桐生くんはお弁当ないの?」
清水さんのとなりに座る水無瀬くんから声が飛んでくる。
右どなりを見ると桐生くんはお茶のペットボトルを手に持つだけだった。
「……俺、昼はあんまり食べないんだ」
「なのにお昼誘ったの?」
「べつに、メシなくてもお前といられればいいんだよ」
「……っ……」
なんだそれ。よくそんなことを恥ずかしげもなく言えるな。
言われている私のほうが恥ずかしい。顔が熱を集めているのがよくわかる。
水無瀬くんも清水さんも目を見開かせている。
「おにぎり、いる?」
「え?」
私のお弁当箱を差し出しながら言うと桐生くんが驚いたように背もたれに預けていた体重を浮かせた。
「なにも食べないのはさすがにキツいでしょ」
そのあと桐生くんは照れたように「……ありがとう」と言って私の差し出したおにぎりを手にした。
私もなんだか小っ恥ずかしくなって顔をうつむけた。
「お前がつくったの?」
「お母さん」
「なーんだ」
「じゃあ返して!」
「冗談だよ、ごめんて」



