離したくない。絶対離したくない。


どこまで来ても往生際が悪い自分を嘲笑うかのようにふっと息をこぼすように笑った。


繋いだ手は、永遠なんかじゃなかったね。



「じゃあ、帰るね」

「うん……」

「身体、大事にしてね」

「うん……」



絶対離さないと思って繋いだ手を、私から手離した。こんな瞬間が来るなんて、あのときの私は想像していただろうか。


保健室を出る。涙は最後まで我慢した。


校舎をも出て、帰宅路を淡々と歩く。



「うっ……うっ……」



どうやって我慢していたのかわからないほどの涙が滝のように溢れでてくる。


とうとう歩けなくなって地面に座り込んだ。
冷たいアスファルトのデコボコが足に触れる。
風が頬をなでて、私の横を通りすぎる。


どうしてこうなったのかはもういいんだ。


でもどうか泣かせてほしい。

初めてこの世界で好きになれた人だった。

夏希のおかげで自分がすこしだけ好きになれた。


本当に特別な恋だったから……。


さよなら、私の初恋の君。


私じゃない女の子と、どうか幸せに。