放課後になった。
今日もバイトだと言う夏希を見送って、部活のある清水さんともバイバイをした。


そしてどちらからともなく私と水無瀬くんは一緒に教室を出た。



「俺、黒木めぐるとも中学から同級生だったから色々知ってるんだよ」

「直球だね」



まるでもう犯人すらわかっているみたいな言い方だ。



「黒木めぐるは夏希のことが好きなんだよ。あいつに近づく女に嫌がらせしてるのも、一時期噂になって孤立してた」

「中学のときからなんだ……」



夏希に対する想い。独占欲からくるいじめ。



「でも夏希は"大切な幼なじみだから、めぐるがそんなことするわけない"ってかばってたんだ。つか、本気でそう思ってるっぽい」

「夏希らしいね」



どこまでも真っ直ぐに、大切な人を信じている。

じゃあやっぱり、黒木さんが私に嫌がらせしてることを知ったら、ショックを受けるんだろうな。



「大丈夫か?夏希に相談しないのか?」

「できるわけないよ。負担になりたくない」



彼はいま、ギリギリで生きている。
そう思う。


だっていつもヘラヘラ笑って、なにも悩みなんかないみたいに教室で、クラスの中心で笑っているけれど、絶対毎日きついと思うんだ。


朝早くから起きて新聞配達をして、学校にきて授業を受けて、夕方から夜はまたカフェでバイトをして……。


私のことも、とても大切にしてくれている。
休みの日はデートだってする。
友達のことも、夏希はおざなりになんかしていない。


すべてを全力で大切にしている。

だからこそ、毎日がきつくてしんどいはずなのだ。


いまを精一杯、頑張っている。