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昼休みが終わりに近づき、私たちは教室へと戻った。
他愛のない話をしながら廊下を歩いて行っていると、教室の前に見覚えのある女の子がいるのを発見する。


この前傘を貸してくれたとなりのクラスの黒木さん……?


誰かを捜しているようで、あたりを見回していた。



「あ、夏希」



探していたのは夏希か。
となりの彼に気づいた黒木さんが顔に花を咲かせる。
私には視線が向かない。



「めぐる、どうした?もう体調いいのか?」

「ん、今日はね。あのさ、この前貸してって言ってたCD持ってない?」

「あ、あるわ!持ってくるから待ってて」



先に教室に入って行った夏希。
当然のごとく、その場に私と黒木さんが残された。


なんだか、気まずいのは、気のせいだろうか。



「橘さん」



急に話しかけられて驚く。



「夏希と付き合いはじめたって本当ですか?」



彼女の目が私をまっすぐに見据えている。
本当のことを言うかすこし迷ったけれど、嘘をついてもすぐにバレることは目に見えていまので素直に頷いた。


私のかんが正しければ、黒木さんはたぶん……。



「なんで……」



黒木さんは……。



「なんで夏希はあなたみたいな女を好きになるの?」



……夏希が、好きなんだ。


口調と表情が豹変した。声が低くなり、目が鋭くつり上がる。私は溜まっていた唾を飲み込んだ。



「どうしてなの」

「黒木さ……」

「ずっとずっと好きだったのに!取らないでよ!」