あのとき離した手を、また繋いで。




もしかして、夏希も同じ気持ちでいてくれているのかな。そうだといいな。



『モナは俺のことあんまり好きじゃないのかと思ってた』

「どうして?」

『だってずっと俺の片想いだったから。付き合うことになったけどすっげぇ不安だった。今日だって努とふたりで来るし』

「ごめん……」

『次からは俺にちゃんと言ってから来てよね』

「うん、そうする」



自分が夏希の立場だったら嫌だもん。
私が働くところに夏希と女の子がふたりで来たら、きっと傷つくはず。



『あー、切りたくねぇ』

「うん……」



ベッドに横になって、スマホを耳にあてがう。
通話のしすぎでか、スマホが熱を帯びているようだ。



「でも寝ないとキツいでしょ?」

『うん。あのさ、わがまま言っていい?』

「ん、なに?」



すこしだけ間を空けるように夏希が黙る。



『俺が寝るまで電話切らないでほしいんだけど……』



控えめな声と、可愛いお願いに私は悶絶する。



「いいよ、それぐらい」



夏希って絶対女の私よりも可愛い気がする……。
男らしいところももちろんあるのだけど、なんだろう、心をくすぐられる。



『マジで!?じゃあ俺急いで風呂ってくる!』

「うん、行ってらっしゃい」



慌てた様子でスマホを置いたのがわかる。
ドタバタと足音が、遠巻きにも聞こえる。
おかしくてクスクスと笑った。



「急がなくてもいいのに……」



何分でも、何時間でも待っていられる。


スマホを充電器に繋いで、スピーカーに設定した。
ただ天井を見つめて、待ちぼうけ。
その時間の経過さえ、心地いいものに感じる。


恋とは本当にすごいものなのだなぁ……。


はじめての恋の相手が夏希でよかったと、心から思わされる。
素敵な人に恋をして、想われている。
この事実に幸せしか感じない。