あのとき離した手を、また繋いで。




「それ飲んだらさっさと解散しろよ」



鈴が鳴る。ほかのお客さんが来たらしく、夏希がその対応にまわった。



「ねぇ橘さん」

「ん?」

「俺、どうすればいっかなぁ」



苦いアイスコーヒーを口に含みながら、水無瀬くんがしおらしく言う。
私はアイスカフェラテにシロップを混ぜながら「優しくしないとね」と助言をする。


まずそこから始めないとね。
でもまあ、たぶん、両想いなんだとは思うんだけどな。
清水さんもまんざらでもなさそうだったし。



「じゃあ、そろそろ出るか」

「うん」



頼んだ飲み物も飲み干して、恋バナを堪能した私たち。
立ち上がって、夏希の姿を探した。



「あ、夏希」



見つけて声をかける。



「もう帰るね」



告げると夏希が「夜バイト終わったら電話する」と一言。
入り口から団体のお客さんが来店されて、騒がしくなる店内。
忙しそうだからと、すぐにお店を出た。


すごいなぁ、夏希。
私はアルバイトしたことないからなぁ……。


朝も夜もアルバイトして、昼間は学校か。
どんな生活しているんだろう。
そんな忙しい毎日の中でも、私のことを見つけて恋をしてくれたということなのかな。


駅で水無瀬くんと別れて家路についた。


母が帰ってくる前に洗濯物と、朝使ったままの食器たちを洗ってテレビを観ながら過ごす。


やがて母が帰宅し、夜ご飯を食べた。
お風呂に入って、ベッドの上でまったりしているときだった。
スマホが夏希からの着信を知らせた。