あのとき離した手を、また繋いで。



顔をあげるとそこには"不機嫌です"とまるで書いてあるみたいな表情で立つ夏希の姿があった。


私と水無瀬くんの前にお水の入ったコップを乱雑にふたつ置く。若干水がこぼれた。



「お前ら堂々と浮気か」

「ちげぇーから」

「遊びに来たんだよ」



笑って言うと「いつの間に仲良くなってんだよ」とボソボソと呟いていた。


ヤキモチ焼いてくれるのが、なんだか嬉しい。



「なんにするの?」

「接客態度わる!」

「あ?」



わざとらしく顔にかげをつくる夏希に水無瀬くんがお構いなく絡んでいく。それを見て私はクスクスと笑った。



「じゃあカフェラテとコーヒーな」

「ありがとう」

「おう」



注文を聞き終えた夏希が中へ戻っていく。
その後ろ姿を見つめていると、前方からの視線に気がついた。
水無瀬くんがにやにやしながら私のことを見ていた。



「なに」

「べっつにぃ」

「……水無瀬くんって清水さんのこと好きでしょ」

「は!?」



意地悪したくて言うと、予想以上の反応を見せてくれた。
焦ったように声を荒げ、顔を真っ赤にしている。してやったり。



「な、なん、でそうなるんだよ……」

「ふたり見ててなんとなく」

「そうか、そんなにわかりやすいのか、俺……っ」

「かなりね」



恥ずかしげに大きな手で小さな顔を隠す水無瀬くんに、クスクス笑う。


すると「お待たせしました」と夏希が私たちが頼んだ飲み物たちを運んできてくれた。


置き方がまた荒々しかったのでびっくりすると「ほんと仲が良いんだな」と低い声で言われた。