あのとき離した手を、また繋いで。




こういう感情って自然と湧いて出てくるんだ。初めて知った。


支えてあげたい。大好きな彼を。



「あいつは大切なものが多いから」


「うん」


「苦労すると思うけど、よろしくな」



立ち止まった水無瀬くんのことを私も立ち止まって真っ直ぐに見た。



「ありがとう、教えてくれて」



水無瀬くんが頭を横に振った。私は笑う。



「水無瀬くんって意外と友だち想いなんだね」


「意外とは余計」


「ふふふ、早く行こ」



一秒でも早く夏希に会いたくなっちゃった。
なんて言ったら、夏希はなんて顔をするだろう。


なんとなく、想像はつくけれど。
きっと、こらえきれずにキラキラした顔で笑う。


不思議。一度溢れ出した想いは、とどまることを知らない。



「あーあ、お店ついてから話そうと思ってたのに、つくまえに話しちまった」


「そうなの?」


「まあ、いいや。俺ら仲良くできそ?」


「んー、どうかな」



悪戯心でからかうと、頭を軽く小突かれる。


うそだよ。たぶん私たち仲良くなれる。
だって私も水無瀬くんも夏希のことが大好きだから。


しばらく行くと水無瀬くんがとあるお店の前で立ち止まった。
見た感じ新しめの外観。窓から覗く店内は、とても居心地が良さそうだ。



「ここ?」

「うん、行こ」



店の扉を開けると、可愛らしい鈴の音がした。よく扉の上あたりを見てみると鈴がついているのがわかる。



「いらっしゃいませ、おふたりですか?」



女の子の店員さんが私たちに気づいて席まで案内してくれた。
窓際の席にふたりで座ってひとつのメニューをふたりで覗いていると「おい」と低い声が上からした。