制服を掴む手に力が入る。



「魔法、とけてないから……」



背中に、額をくっつける。
すると夏希の身体が動いて、彼がこちらに向き直ったことに気づく。


そしたら次の瞬間には両頬に手を添えられて、彼の伏さられた目を見たときにはすでに私の唇には彼の唇が重なっていた。


時が止まったような気がした。
一瞬だけ世界が無音になって、静寂に包まれたような、そんな気がしただけ。



「また明日!」

「……っ……」



夏希が走って行ってしまう。
そのうしろ姿を、見えなくなるまで目で追って、見えなくなってからもしばらく動けずにその場に佇んでいた。


私……ダメだ。

夏希のこと、好きで好きでたまらない。


この気持ちをどう処理すればいいのかわからない。


心の中の真ん中、熱いものが重たくある。
胸がドキドキして痛い。
好きな想いが大きすぎて、辛い。


私はたぶん君に、溺れるように恋に落ちた。


それはまるで、この世界から尽きることのない海に溺れ、酸素を求めてもがき苦しむように、痛く窒息しそうになるほど狂おしく、愛おしい恋でした。