あのとき離した手を、また繋いで。



抱えきれない気持ちが溢れている。
こんなの、間違いなく生まれて初めてだ。


私、初めて好きな人ができたよ。



「あー、離れたくねぇな」

「うん」

「本当に思ってる?」

「思ってるよ……!」



なんで疑うんだ、まったく。
こんなに夏希のこと、好きだっていうのに。



「俺ら砂まみれだな」

「ほんと」

「誰のせい?」

「夏希」

「モナだろ!」



夏希が立ち上がって、手を引かれて私も立ち上がる。
身体中についた砂を払って、手を繋いだ。



「あっちの日陰で休もう」

「うん」



砂浜を抜けたところにある、大きな木の下。
そこにある真っ白なベンチにふたりで腰かけた。


ゆったりと流れゆく空に浮かぶ雲。
それを目で追いかけているのだけど、まぶたに重力を感じて自然と閉じてしまう。



「眠い?」

「うん」

「寝てていいよ、肩貸すから」

「ありがとう……」



うとうとしはじめるが、寝てしまったらせっかく一緒にいるこの時間が無駄になると我慢をする。


何度も頭をこくっと落っことしそうになっては姿勢を正す私を見て「遠慮しないで」と頭を優しく撫でる夏希。


その優しさに「大丈夫」なんて繰り返していくうちに、閉じてくるまぶたに逆らうことができなくなってしまって、そのまま意識を飛ばした。


それからどれくらいの時間が経ったのか、微睡みながらうっすら目を開けると、まだ日の光りが辺りを明るく照らしていた。


身体の右側に重みを感じて横を見ると、夏希がすこしだけ私に体重を預けたかたちで寝息をたてながら、可愛い顔をして眠っていた。


手は、繋がったまま。


まだ眠気が残っていた私は好きな人に寄り添うようにそのまま目を閉じて、再び睡眠の世界に入った。